全国総「ベジタブルマイスター」

我が家では、ホームページやブログをしていたり、東京を中心にこだわり農産物の生産者と会員レストランとの橋渡しをする老舗ブローカーと取引している関係で、色んな問い合わせがあります。10年ほど前は有名な築地の卸問屋さんから、○○シェフのつかっている野菜を、私のお客さん(なんでも有名ホテル)に納めたいので、取引したいとのこと。しかし、その会社は扱う物量もちがい、規格にも厳しいのが想像できたので、丁重におことわりしました。
 
 いまでは、ローカル局でも地元のレストラン紹介番組で、契約栽培農家うんぬんと必ずといって良いほど料理人が言うようになっていますが、10年前は、西洋野菜を、レストランと契約して、宅急便で送るなんていうことはめずらしかったのか、有名男性向けのライフスタイルやファッションを扱う雑誌のレストラン特集でカリスマ料理人お気に入りの野菜農家ということで、カラーグラビアに登場することもありました。
 すると、野菜料理が美味しい店の特集をレストランガイド的な月刊の料理雑誌で組むから野菜を送ってと。まだ始めたばかりのマズイトマト、しかも、日本の規格だと、B級品のでこぼこトマトや、ニューヨークで話題になっているという昔の品種であるヘリテージ(遺産的な)トマトを送りました。自分としては、欧米の青空市に並んでいるトマトをイメージしてました。作戦が成功し、その特集号の表紙を私のトマトが飾りました。

 しかし、栽培技術も、営業力もまだまだ、小僧っこで(今はそれでもアンちゃん位にはなったとおもいますが)次第に私の取引先と競合する業者が増え、私料理人のお土産の種で栽培を始めた野菜も、インターネットで簡単に買えるようになりただでさえ、少量多品目の利益が少ない仕事でしたが珍しくなくなってきており年々売り上げダウンでした。それもそのはず、極最近では、地元のホームセンターで、秋植え野菜の苗の中に、「高級イタリア野菜」として、私の冬の定番野菜の苗が売られるようになりました。インターネットが普及する前と後では情報量が大量になった良い現れだと思います。家庭菜園愛好家が求めるものは、定番野菜があればよかったはずです。TVやインターネットの影響です。

こんなこともあります。オーナーシェフのお店から、1500円であれもこれもいれて、トマトは入れないで(なになに先生の1ケース4000円もする極上のを買っているから)てな注文もくるようになりました。まるで、インターネットショッピングのようです。旬の時期の自信のあるトマトを入れるなとは腹立ちます。1500円であれもこれもいれたら、ボランティアになってしまうしブローカーさんには、申し訳ありませんが、そういう注文はお断りするようにしています。
レストランもそれを取り巻く業界も飽和状態で、商売が難しくなってきているんだな。1500円のシェフも悪気は無いんだろうから、申し訳ない気持ちもあります。
 
 私は、どんな産業でも技術開発をおこなったら、発展は無いというのが持論なので、今やっているもののいつも先を考えているつもりです。最初は目新しいものにすぐ飛びつくばかりでしたが、最近は自分と同じ商品が溢れたときに、自分の商品をどうしたら手にしてくれるかを考えるようになりました。それは、いつも一定以上の味であったり、一般流通品よりとサイズがちょっとちがってたり、と少しずつ個性を待たせたいと思っています。

 人と同じ商品で勝負するにはその商品の市場を圧巻する物量が大事になってくるのは必然。それは、ここ最近出荷している、ショッピングセンターの地場農産物のコーナーでもいえることで、ナスなり、トマトを出荷して感じたことです。
 いくら自信の野菜でも他の生産者の方が沢山出しているときは、同じ規格で勝負しているときは、出荷量が多くないと、お客さんは、気づいてさえくれないのです。
 (開発も大事だけど安定的な利益を得ることはもっと大事だとおもうようになりました。
 トヨタ自動車があんだけのびたこと学ぶことが今の私には必用な気がします。)


 食に関する関心がすそ野にまで、広がったことはよいことだと思いますが、何年か前からおかしいと思うことがあります。
 有名なタレントさんが資格を取っていることで話題に上る、ベジタブルマイスターという資格があるようです。
 野菜の選び方や、料理方法、それぞれの野菜のプロフィールや効用などの知識取得にかんする資格だと私は解釈しております。
 そんな経歴の方から最近お電話を頂きます。レストランの料理人の方からの紹介でお宅の事を知りました。○○(社名)の○○と申します。(名乗るのはまだ良い、レストラン関係者は店名や自分の名前すら名乗らない場合がある)ベジタブルマイスターをやっている関係で良いお野菜に関心があります。
 お宅の野菜をレストランへ紹介したいのですが、パンフレット等ありますか?

ここぞとばかり、営業熱心に、パンフレット等を送って差し上げればよいのでしょうが、
 私のところは個人経営ですし、ヘンなこだわりがありまして、なかなか上手くいきません。
 それはこんなことがあったからです。
 ベジタブルマイスターさんが、畑を見にきたいというので、了承し、最寄の駅まで迎えにいきました。まだ、こだわりも無く来るものは拒まずやっていた頃の話です。

 駅に降り立った彼女の姿を見て愕然としました。なんと、サンダル履きでした。(妻にそれは、ミュールというんだよとおしえてもらいました。)畑に来るのにストッキング履きで指の部分が出てる履物はないでしょ。

 また、別のときは、畑で仕事をしていると、近所の百姓仲間のおっさんが、「あんちゃ、お客さんつれてきたぜ!」アポイントも無く料理人さんがやってきました。
 名古屋の何とかというお店で働いてる男の子です。
 ワンボックスカーの後部座席には、サーフボードと、濡れた髪の毛のTシャツ短パンのかわいらしい女の子がちょこんと座って降りてもきません。独身だったころなので、いらぬ想像をして、無性に腹がたったことがあります。その男の子は、訪問したっきり連絡すらありません。スケベーな顔が彼女さんに不評だったのでしょうか?
 今日も昼時に電話がありました。
 私が毎日の日課で楽しみにしているNHKの連ドラを見ながらご飯食べているときです。農家の人全員がそうと限りませんが朝早くから収穫をして、朝は見れないので連ドラの再放送をたのしみにしていることは、ベジタブルマイスターの講義ではおしえてないでしょうね。

 冗談はさておき、販路拡大はしたいですけど、今まで、長いお付き合いがあるレストランさんがある地域の同業者さんと商売をするのは、正直者の私にはやりきれないのがわかっているからかもしれません。
 それにしても、前の日にも違うベジタブルマイスターさんから、取引したいと電話があり、そのときは、夜の8時頃でしたが、まだ、畑から帰っておらず、妻は、ダンナとは、ここ三日ほど、朝早くから夜中まで、畑に詰めているので、話もしていないので、メール
くれれば目を通すと思います。といったようです。でもメールはきません。(三日はオーバーだよ。)
こんなこともありました。ベジタブルマイスターの資格を持った料理人さんは茄子を鉢植えにして欲しい。その鉢植えのナスについた実をお客様の前で収穫しててんぷらにしたいといってた人もいます。地面に植えてある作物を、鉢植えにして、養生させるのは至難の業なのに、それを、高いお金を払ってくれるお客様におだしするなんて、それが、あなたにできるのなら、明日からしばらく仕事休んで、ベジタブルマイスターの勉強します。

 また、別の理人さんは人の話し聞かず、野菜とのツーショット写真をとるのに熱心でした。
 踏んで欲しくない苗までつぶしていきました。きっと上司への報告書か、お店の宣伝の良いパンフレットができたでしょう。
 
農相が消費者はうるさいうんぬんといって問題になったようですが、確かな知識を持つ人が増えることはすばらしいとおもいます。でも、肩書きが一人歩きし本質を知らない連中が増えるのはゴメンです。
 キーボード叩いていてやるせない気持ちになると、妻のおじさんの大工が言った言葉をおもいだします。
 いいよな百姓は種蒔いとけば金になるんだから。

 野菜を作るプロセスを知らずして、マイスターとはよくいったものだ。
 厨房を素人に闊歩されて腹立たない料理人がいるか!

 そう怒りながらも、農の現場をプチ体験させる場をつくれば儲かるかなって思っています。
 
 


 
 

 
 



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